古くからの米どころと共に生きる(宮寒梅酒造様)
宮城県大崎市の中心部である古川は、「ササニシキ」や「ひとめぼれ」が生まれた豊かな米どころです。ここ古川に、大正時代から地元に長く親しまれている酒蔵、寒梅酒造様があります。メインブランド「宮寒梅」は、酒造りに欠かせない宮水の「宮」と、厳しい寒さに耐え花を開き、人々の心を和ませる純潔な雄姿を表す「寒梅」、それらが結ばれるようにとの思いをこめて命名 されたそうです。 20代の若さで5代目を継ぎ、現在は4人の子育てをしながら酒造りと向き合う、岩崎真奈さん にお話を伺いました。
本物志向の酒造り
大正5年当時、地元の有力な地主だった岩崎家は、小作人から集めた米を使って清酒を造ったそうです。これが100年にわたる酒造りの始まりです。戦時中に米不足のために一時製造を中断しましたが、昭和32年、酒造りへの思いから「合名会社 寒梅酒造」の名で復活しました。生産量のうち純米酒の占める割合が6割、吟醸酒を含めると8割にもなる本物志向の個性豊かな地酒を造られています。
寒梅酒造様は「酒米から醸造まで造り手の見える酒造り」を大切にしており、地産地消で醸造しているところに特長があります。それは、一つの大きな出来事が契機となりました。
廃業の危機を乗り越えて
2011年の東日本大震災により、出荷予定であった2000~3000本の便が割れたほか、酒蔵も全壊指定を受け、無事だった一部を残して 酒蔵の取り壊しを行ったそうです。一時は廃業も考えたほどでしたが、大学の同級生であり共に酒蔵を継いだ夫(寒梅酒造・常務)の「やるしかないだろ」という一言と、皆が大変な状況にも関わらず地元の人たちに支えられ励まされたことで、酒蔵の再生を決意しました。そのときの感謝から、「少しでも地元の農家に還元したい」という思いが強まり、「美山錦」「ひより」などの酒米を、すべて県内の顔の見える農家から仕入れることにしておられます。
すべては一杯の感動のため
寒梅酒造様で行っている四季醸造を行えば、一年を通して必要な量だけお酒を製造する事が出来ます。それにより香りがデリケートなお酒を長期保存する必要がなくなり、年間を通して良い状態での出荷が可能です。宮城県の酒というと、料理にあわせる食中酒という役割が強い酒が多いですが、宮寒梅はカプロン酸系を多く含んだ、いわゆる「香り系」と呼ばれる吟醸香が特長といえ、対照的な存在ともいえるでしょう。
今日、日本酒の良さを人々の胃が染みついてもらう為には、最初の一口で美味しいと感じる酒が必要だと思います。それを大切にし、一杯の感動を与える酒造りを目指されているそうです。
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